現地だより|自然の循環を壊さず、美しさをつくる

こんにちは。アフリカシアバターの原口です。ブルキナファソの現地の景色をお届けする、現地だより。

先日、アフリカシアバターのパートナーの女性組合の活動地サポネを訪問する途中、車窓から雨季だけに見れる美しい緑を眺めていました。「これはシアの木、マンゴーの木、バオバブの木…」。

こんなに自然豊かな景色が、これからも続くといいなぁと願いながら、私の頭の中には別の景色が浮かんでいました。それは、パーム油の原料であるアブラヤシのプランテーションの景色。環境問題に関心のある方は、聞いたことがあるかもしれません。

今回は、そのパーム油とシア脂を比較しながら、現地の様子を写真とともにお伝えします。ぜひお楽しみください!

アブラヤシのプランテーション(イメージ)

パーム油の影にある、熱帯林の現実

私たちの生活の中にある食品や化粧品には、植物から採れる植物オイルがたくさん使われています。その中でも、パーム油は世界の中でも生産量が多い植物性オイルのひとつです。石けんやリップ、クッキーやカップラーメンなど、実は、身の回りのあらゆる製品に含まれています。

アブラヤシ(イメージ)

パーム油の原料である「アブラヤシ」は、20年以上も実をつけ続ける、効率のいい作物と言われてきました。一方で、効率を求めるあまり、アジアの一部地域では熱帯林が急速に伐採されてきた、とも報告されています。

例えば、スマトラ島のある地域では、25年間に森林の6割以上が消えて、広大なパーム農園に変わったと報告されています。また、ボルネオ島では、湿地林を焼き払い農地に変える過程で大規模な火災が頻発し、燃えた地からは二酸化炭素が放出、気候変動の原因にもなり得る、とも報告されてきました。

オラウータン(イメージ)

さらに、それらの森にはオランウータンやゾウなど、これまで何百もの動物たちが暮らしてきたにも関わらず、実を食べてしまうという理由で「害獣」とされ、追われてしまう命もあります。「森を切ること」と「油をつくること」と直結してしまっていたのが、パーム油の過去の学びです。

パーム(イメージ)

シアの木は切らない、なぜなら

一方で、私たち「アフリカシアバター」の原料であるシアの木は、アブラヤシとは少し異なる存在です。シアの木は、アフリカのサバンナ地帯の限られた地域で自然に育つ、野生の樹木。単一作物を大量に栽培するモノカルチャーのプランテーションではありません。

そもそも、シアの木は実をつけるまでに、20年もの歳月がかかります。効率や収量だけを最優先する生産方式では、その時間を待つことはできません。そのためシアの木は「伐って植える木」ではなく「守りながら共に生きてきた木」です。現地の人々は長い年月をかけて、自然のリズムに委ねながら、この木とともに暮らしてきました。

ブルキナファソの地方を歩くと、広大な土地にぽつんぽつんと立つ、シアの木々が見えます。その周りにはマンゴーやブドウの木、トウモロコシやソルガムの畑。シアの木はそれらと長い間、ともに生きてきました(動画は実際のブルキナファソの景色です)。

ブルキナファソのシアの木

また、落ちた葉は土に栄養を返し、花の蜜を求めて訪れたミツバチは受粉を助ける—。そうして、シアと自然が互いを支え合う生態系が循環しています。

さらに、最も暑い時期は45℃以上にもなるブルキナファソでは、木陰は地の温度を下げることにも貢献しますー。それらは、現地の人々の憩いの場になり、農家の作業場にもなります。

木陰で休んだり働いたり

そして、シアの実を拾うのは、その土地で暮らす女性たち。彼女たちは、木を切らず、実を拾い煮て、油を搾り、自分たちの生活に変えてきました。木を切ることではなく、実を活かすことで、暮らしが成り立つー。その循環が、「自然を壊さずに生きた」現地の知恵、そのものです。

シアの実

自然のリズムに沿った伝統製造

もちろん、シアバターの製造にも、一部エネルギーは使われます。

伝統製法では、薪を燃やしてシアを煮る工程がありますが、製造過程で出た残渣燃料を有効利用し、薪を減らして作る現地の工夫もあります。さらに、未精製シアバターの製造時の水の使用量は、1kgあたりわずか数リットルほど。パーム油は5,000リットル程度とも言われるため、シアバターの製造は地球への負担はとても小さなものなのです。

また、シアの木は毎年、成熟した実を落としながら、200〜300年と生き続けます。新しく土地を切り開く必要がなく、樹木が生えてきたその事実が、自然と共生してきた証です。シアバターは、自然と人とのバランスを保ちながら成り立ってきたーーそれが、シアのものづくりの原点です。

シアの木

化粧品業界ができる、ひとつの選択

いま、世界の化粧品ブランドはサステナビリティを掲げ、「どんな原料を使うか」を見直し始めています。RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)などの認証制度も広がり、前向きな改善は進んでいますが、依然として森林破壊や労働搾取も懸念されています。

そんな中で、シアバターのような「自然を守る原料」は、別の可能性を示しています。それは、“自然を残しながら、人々が豊かになる” 原料という、まるで逆の発想。

例えば、シアバターを5kgを購入することが、1人の女性の1か月分の生活を支える。その小さな循環から、地域の経済を生かし、土地を守る力になります。化粧品を作る人も、使う人も、みんながその自然の循環の一部になる。

シアの木と女性と子ども

自然の循環とともに、美しさを作る

パーム油とシアバター。どちらも同じ「植物オイル」ですが、自然との関わり方はまったく異なります。パーム油は、自然を切り開いてきたオイル。シアバターは、自然と共に生きてきたオイル。

もちろん、過去のパーム油が担ってきた大きな役割もあり、私たちもその恩恵にあずかってきたことは事実です。シアバターが完璧だと言いたいわけではありません。しかし、過去の経験からわたしたち人間は学べることもある、と考えています。

アフリカの女性たちが拾う、一粒の実から生まれるのは、ただの保湿成分ではなく、自然を壊さない循環の美しさの象徴でもある。私たちアフリカシアバターは、この自然の循環のリズムを壊さずに、伝統技術と人の手で未来へ繋げていきたい、と考えています。それが「美しさをつくる」ということのもうひとつの新しい価値だと思うからです。

※現地だよりは見聞録も含まれるため、正式名称などが異なる場合があります。

アフリカシアバター
ブルキナファソが原産国のシアバター専門ブランド。サステナブル・エシカルなシア脂の仕入製造販売(法人向けBtoB)。オーガニックコスメブランド・化粧品ブランド・美容室などを対象に、スキンケア・ボディケア・ヘアケアなどのオリジナルプロダクトへの配合実績あり。シアバターを配合したレザーケアクリームのOEM企画も展開。
■会社名:ボーダレス・ブルキナファソ
■代表:原口 瑛子
■住所:BP 2621 OUAGA C.N.T, Ouagadougou, Burkina Faso
■公式サイト:https://africa-shea-butter.com/
■公式Instagram:https://www.instagram.com/africa_shea_butter/

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